この時代、最良と最悪の
新しくできた劇場で、山海塾の公演を見た。
舞台は素晴らしく、同時代における文化のなかで、最良のものの一つであることは間違いないのだろう、と感じた。
と同時に、この劇場という文化装置、紛れもない近代の発明であるこの装置がもたらした災厄に思いを馳せた。
舞台は、最高潮の盛り上がりを迎え、私は、まったく同じ装置がもたらす最良のものと最悪のものを、同じものでありながら違うものとして峻別しながら、この時代は、引き受けていかねばならないのだ、と思い至り、身震いするような感覚を覚えた。
ナチスが、あんなにも熱狂をもって迎えられたのは、ナチスの集会で与えられる興奮と感激が、劇場で我々が与えられるのとまったく同種ものであったからだ。
劇場で与えられる「生きる力」を、ナチスの集会で、人々は得た。
あの熱狂を、我々は、峻別する事は可能なのだろうか。
一部の人間にとっては、可能であろう。
一部の人間にとっては、不可能であろう。
劇場は、我々にとって、災厄であり祝祭である。
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